episode 5
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“ UNICORNUUS ”
「 ウニコルヌス ― 純潔、無垢」
プリニウスの博物誌にあるように、象にも立ち向かう勇猛果敢さと誇り高い性質を有し、決して生きたままで人間の手に落ちることはないといわれるユニコーン。
唯一心を許すのは純潔無垢な者にだけ。
人間の持つあさましさや残虐性を敏感に見抜いてしまう。
― 澁澤龍彦『プリニウスと怪物たち』より ―
“ 西欧で最も愛好された、一角獣に関する文学や造形美術のテーマは、申すまでもなく「一角獣と貴婦人」のそれであろう。
リルケの『マルテの手記』に引用されて、すっかり有名になったクリュニー美術館の壁織物は十六世紀初頭のものだが、このテーマそのものは、すでに十三世紀から多くの物語に現れている。キリスト教は、この「一角獣と貴婦人」の神話のなかに、啓示あるいは告知の生き生きしたイメージを発見したのである。
処女の膝の上に置かれた一角獣の角はマリアへのお告げの言葉の書いてある巻紙である。一角獣は、処女を受胎させる聖霊の役割を演じている。だから、その角は同時に太陽光線にも同一化されるだろうし、精神分析学の見地から眺めれば、ファリック・シンボルともなるであろう。ユングによれば、大天使ガブリエルによって追われた一角獣は、聖母の胎内に庇護を求めたものであり、これがすなわち聖母の無原罪懐胎なのである。シンボリズムの構造として、これほどすっきりとしているものは滅多にあるまい。”
“ 現代フランスの批評家ベルトラン・ダストールは、クリュニーやクロイスターズの美しい壁織物について考察をめぐらしながら『一角獣と貴婦人の神話』(一九六三年)という好エッセーを書いた。そのなかで、彼はこのエロティックで神秘主義的なテーマを、むしろ騎士道的恋愛という中世的な概念に近づけて解釈している。彼にとって、一角獣は恋愛の成就を拒否することを決意した、偉大な恋する女たちの典型なのである。一角獣は、所有の恋愛ではなく拒否の恋愛、愛への忠実のために愛を諦める愛、すなわち現代ふうに言えば、恋愛の昇華を象徴しているのだ。
このことに関連して、私が思い出すのはルネサンス期のすぐれた抒情詩人、ダンテの親友であったグイド・カヴァルカンティのエピソードである。彼はみずから一角獣と称していたが、それは自分が一人の婦人に熱烈な愛を捧げたのに、裏切られて不幸になったという意味合いをこめていたのだった。愛は人間に苦悩をあたえるという面を、一角獣の称号によって詩人は協調したかったのであろう。 ”
[ design / デザイン ]
一角獣の角の重要な属性である細長い螺旋形の形状に着目。
既製品のコークスクリュー(ワインの栓抜き)のスクリュー部分のみを抽出しマーク刻印を施したものを型取りし、素材を925SVとK10YGに。リネンリボンで固定しペンダントとしました。
着用にはお好きなワインのコルクを刺してアレンジも。